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主ビア好きが綴っています。
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星が、流れた。


さっきから、リュカが空を見上げるごとに、星が夜空を駆け抜けていく。
流星群だろうか。


夜の闇の中、焚火は赤々と燃えて、あたりを丸くオレンジ色に照らしていた。
炎が微かな風で揺れると、その傍で眠っている、照らし出される二人のこどもたちの寝顔の上の影も、揺れた。
まだあどけない、可愛いらしい寝顔は、二人寄り添うように並んで、お互いに顔を見合わせている。
母親譲りの色白の肌も、さらさらの金髪も、今は夜の闇の中で焚き火の炎の色に染められている。
安堵しきったようにすやすやと眠る、その、あまりの可愛いらしさに、二人の子供たちを見遣ったリュカの顔に微かな笑顔が広がった。

不意に、リュカは、音をたてずに静かに立ち上がった。
そして、かわいらしい寝顔で寝息をたてている双子たちに近付くと、腰を低くして、寝相で少し乱れた毛布を、そっと直してやった。
気配に気付いた、焚火のそばで双子のお守りをするように寝そべっていたプックルが、耳をぴくりと動かして、顔を上げる。そして、再び立ち上がったリュカと目が合った。

じゃあ、よろしく。

そう言うように、リュカはプックルをしばし見つめた。プックルは、黙ってリュカをじっと見守っている。
やがてリュカは、気配を消すように、そっと静かに、双子や仲間たちに背を向けて、歩いていった。



月がないので、星がよく見える。
暗い夜空に、光のダイヤモンドたちが、降ってきそうなほどに一面にいっぱいに散りばめられている。
リュカは、海の見える丘の上の、大木の下に、幹に寄り掛かって座った。
腰を下ろした傍には、夜闇の中でも色鮮やかに映る、黄色とオレンジ色のマリーゴールドの花が、たくさん群れて咲いていた。
その、愛しい人を思い起こさせる鮮やかな明るい色あいに。
リュカは思わず、目を細め、視線を落とした。あたりは、怖くなるほどに静かだった。鳥の鳴き声も、虫の声も、風の音さえもしない。
この世とは思えなくなるような深い静寂に包まれ、リュカは堪らなくなって、胸を押さえた。 



ーーーーーーーーーー心が、凍えてしまいそうになるーーーーーーーーーー



リュカは、深く俯いて、目を瞑った。
ひたすらに耐えるような、切なげな悲しげな表情で。
そして、ゆっくりと、やっとという感じで力無くまた瞳を開くと、無造作に膝に置いた左手の、薬指を見つめた。
薬指には、今ではすっかり体の一部のようになった、指輪が光っている。
ひとしきりそこを見つめたリュカは、そのまま再び、力が抜けたように、がくりと頭を垂れた。



ーーーーーどうしようもなく、逢いたくて逢いたくて、堪らなくなる時がある。



明るく、やさしく、鈴の鳴るような澄んだ声で、自分の名前を呼んでいた、あの声が、堪え切れないほどに、恋しい。

どんな状況でも、きっと何とかなると、未来に輝きを見失うことのなかった、あのひたむきさーーーーー


『大丈夫。必ずまた、逢えるわ』


ーーー今すぐ、凍えて生きている感覚を失ってしまいそうなこの身を抱きしめて、そう、言って欲しい。


この、抜け殻のような躯に、心に、彼女のぬくもりを分けて欲しい。
力いっぱいに、この腕で、あの柔らかな細い躯を、抱きしめたい。
愛しい人の空気で、声で、感触で、すべてでーーーーー


満たされたい。


彼女なしの人生なんて、彼女と一緒になってからは、もう、とても考えられなかったのに。
絶対に絶対に、手放したくなんてなかったのに。
離れたくなかったのに。
こんなふうに、隣に彼女のいない日々なんて。
この世で一番、恐れていた、耐え難いことだったはずなのにーーーーーーーーーー。


『逢いたい』


リュカは、声に出さずに、唇でそう呟いた。


ビアンカ。
君は、今、どこにいる・・・・・・・・・?


もう二度と、逢えないかも知れないーーーそんな不安が、恐怖が、この心を、絶望の深海へと突き落とそうとする。
リュカは、ひたすらに、耐え続ける。
左手の指輪を抱き締め、小さく震えながら・・・・・・・・・・・・。



伏せたリュカの顔から、音もなく、雫が、闇の中で凛と咲き誇るマリーゴールドの花の中に、音もなく、落ちていった。


夜空には、満天の星。
そして、ひとつ、またひとつと、弧を描きながら、流れて消えて行く。


地上で、彼がマリーゴールドの花の上に落とす雫と、同じように・・・・・・・・・ 

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彼の瞳が、怖い。


滝の洞窟の中で、私は、彼から目を逸らしてばかりいた。

彼は、素直な人だから。
心を、偽れない人だから。

彼の、私を見つめる瞳に、気づいてはいけないような気が、していた。


私を映す、彼の瞳は、

胸がどきどきするほど、ずきんと痛くなるほど、
優しくて。
私のすべてをふわりと包み込むように、
温かく、
そして、突き動かされそうなほどの情熱を、感じる。
私はいったい、どうすればいいのだろうーーーそんなふうに、つい混乱してしまいそうなほどに。

それから。
同時に、
切ないのだ。
時々、気づかぬふりをするのをやめて、
彼の腕の中に飛び込んでしまいそうになるほどに。


でも。


私は、決して、揺らいでは、いけない。

それが、彼のためだから。

もしも、私が感じていることが、単なる独りよがりではなく、真実であるならば。
絶対に、絶対に、
あってはいけないことなのだ。
彼の道を、歩んでいくために。
彼が横道にそれてしまうようなことになっては、駄目なのだ。 



自分のためになら我慢できないようなことでも、
それが彼のためであるなら、
私は、きっと、耐えられる。

ーーー私は、そう、自分に言い聞かせるしかなかった。

・・・でも・・・・・・。


ああ、神様。


たった一度だけ。
たった一度で、いいから。


彼のまなざしに、応えても、いいですか?

(終)



『大好きだよ』

 

言葉ではないけれど。

 

胸のなかに、確かに、響いてくる声がある。

 

 

 

誰もいない、灼熱の太陽が照りつける砂漠の中、

偶然見つけたオアシスで、

喉を潤し、水に入って汗を流す。

 

水は、泉の底が見えるほど透明で、清冽だった。

強烈な陽差しにさらされて、火照った肌には、この冷たさがとても心地いい。

泉の周囲には、萌えるような緑色の若草の絨毯が広がり、

水際に、可愛らしい薄桃色のヒルガオの花が咲いている。

 

気持ちよさそうに、時折水に潜り、

日焼けした肌に水を浴びる、筋肉の乗った逞しい背中が、

とても綺麗で、色っぽくて。

私は彼より少し離れたところで、肩まで水に浸かりながら、

小さくなって、青空や雲を映した水面ばかり見つめていた。

 

なにげない瞬間に、ふと目が合う。

どきりとしてつい少し戸惑ってしまう私に、屈託のない笑顔が向けられる。

 


こんな瞬間が。


今、私にとって、


たまらないほどに幸せなのだ。

 


自然を装って、彼に背中を向けると、

水の中を、ゆっくりと歩く音がして。

 

後ろから、彼の大きな手が、私の肩に触れた。

 

「大丈夫。こんなところ、誰も来ないよ」

「うん。そうね」


知らず知らずのうちに、水辺に伸ばした指が、ヒルガオの花を摘んでいた。

 


そのまま、背中に、彼の肌を感じ、

後ろから、そっと抱き締められる。

 

まるで、時が止まったみたいに。


私たちは、触れ合わせた肌と肌から、幸せを感じていた。

 

 


ほら、また。


言葉じゃないけれど、彼の声を、感じる。

 

 

『ビアンカ。
大好きだよ』




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